スクールやグルコンでは、いつも静かに他のメンバーの話を聞いていたみっちゃん。

「自分の気持ちをあまり話さないから、何を考えているのかわからない」と周りから言われることもあるようですが、「しゃべらなくても、ただそこに居る」というみっちゃんの「あり方」は、みっちゃんの中に安全安心の感覚があるからできること。

これって、実はすごいことなのかもしれません。みっちゃんのあり方の話から、心理的安全性とおしゃべりの関係も明らかになり、ミレイちゃんも大興奮のインタビューになりました。

安全安心な場だから、話を聞いているだけで居心地よかった

みっちゃん(公務員、50代、スクール1期生)

グルコンで明かされた衝撃の「画びょう事件」

――みっちゃんと私(はるみ)は同期生ですが、みっちゃんと言えば、グルコンで話してくれた「画びょう事件」がとても印象に残っています。もう一度ここで聞かせてもらえますか?

みっちゃん

いいですよ。中学1年生のとき、下駄箱のくつに画びょうが2~3個入っていたことがあったんです。「あれ?なんでこんなところに画びょうが?」と不思議に思って、くつから画びょうを取り出して、その辺に捨てました。

次の日もまた、画びょうが入っていました。私は何の疑問も持たずに、「また入ってる。どこから落ちてきたんだろう?」と思って、画びょうを捨てました。その次の日もまた入っていて……(笑)。

そこでようやく、「もしかして私、いやがらせされてる?」と気づいたんです。

――それまでは全然、いやがらせに気づかなかったんですよね。

みっちゃん

そうなんです。「私のことを嫌いな人がこの世にいるはずない」と思っていたので。でも、画びょう事件があってはじめて、「私のことを嫌いな人がいるんだ」と認識しました。

――自分のことを嫌う人がいるはずない、と思えることがすごいです。最初にこの話を聞いた時、私はこの話の意味するところに気づいていなかったけど、今ならわかります。うぬぼれが強いとかそんな話じゃなくて、みっちゃんはしっかりと自己受容ができていたから、自分の周りの世界のこともやさしく感じられていたんですよね。

ミレイ

あの「画びょう事件」は、みっちゃんの人となりがわかる象徴的なエピソードだったね。

スクールに学びにくる人は、多かれ少なかれトラウマを抱えている人が多いけれど、みっちゃんはちょっと違う、という印象がありました。それほど根深くインナーチャイルドが傷ついている感じでもないし、かといって、言葉や感情があふれ出す感じでもない。どちらかというと、静かに人の話を聞いてることが多いよね。

だから最初の頃は、みっちゃんのことが「ちょっとわかりにくいな」と正直思っていたんです。個人セッションをしていても、手ごたえがないというか(笑)。もちろん、私のカウンセリングスキルの問題もあったと思うんだけど。

みっちゃん

自分でも、私だけ他のメンバーとは違うなと感じていました。私にだって小さな心の傷はありますよ。でも、「インナーチャイルドが傷ついてる」というわけではないですね。

ミレイ

スクールにくる人は心に傷を抱えている人だ、とか、そこまで思ってるわけではないけれど、そういう先入観を持たなくなったのはみっちゃんからの学びですよね。

言葉は嘘をつくけれど、行動は嘘をつかない

みっちゃん

私、「わかりにくい」と言われることがあります。自分でも思うけれど、なかなか心を開かない。だから、人とすぐには仲良くなれない。でも、仲良くなったら、ずっと仲がいいんです。

周りから見ると、自分の気持ちをあんまり話さないから、何を考えているかわからないみたい。やっぱり「話さないとわからないんだな」と最近は感じています。

ミレイ

私も以前は、「言葉にしてくれないとわからない」という気持ちがあったと思うんだよね。だからさっきも言ったように、最初の頃はみっちゃんに「わかりにくさ」みたいなものを若干感じていたのも事実。

だけど、みっちゃんはスクールやグルコンや勉強会にほぼすべて出席してくれていたよね。みっちゃんの行動を見れば、私やスクールのみんなのことを大事に思ってくれていることはすごく感じた。行動がすべてを物語っているよね。本当に好きじゃなかったら、参加しないから。

人間は簡単に嘘をつくでしょ。思ってもないことを言ったり、おべっかを使ったり、忖度するようなことを言ってみたり。これらすべて、自分を守るためのディフェンスメカニズムだよね。そう考えると、言葉で言うことがすべてじゃないし、「言葉にしなきゃわからない」なんてことはないよ。みっちゃんを見ていて、非言語から受け取るメッセージの重要性を私も学びました。

みっちゃん

私も嘘をつくことはありますけど、おべっかを使うことはできません。言葉を膨らませることも苦手。単刀直入すぎるんです(笑)。だから、グルコンで皆さんがいっぱい話してくれるのを聞いて、「皆さんの言葉が素敵だなぁ。ちゃんと伝わってくるし、すごいなぁ」といつも思っていました。

絶対に「1期生」で入りたかった

――ところで、みっちゃんはなぜスクールに入ろうと思ったの?

みっちゃん

さんぽセンターで、たまたまミレイちゃんの講座を受けたのがきっかけです。そのとき受けた講座の中で、もう一度受けたいと思ったのがミレイちゃんの講座でした。そのあとミレイちゃんのLMTレッスンに参加して、そこではるみちゃんにもお会いしました。

――そうでした。オープンカウンセリングのクライアントにみっちゃんと私が手を挙げて、ジャンケンでみっちゃんが勝ったんでしたよね。

みっちゃん

オープンカウンセリング自体が初めての経験で、何をやるのか知らなかったから、気軽に手を挙げちゃったんです。知らないって恐ろしい(笑)。そのあと、ミレイちゃんがスクールを始めると聞いて、「絶対に1期生になりたい」と思ったんですよね。

――絶対に1期生になりたい(笑)。ミレイちゃんへの愛が溢れてますね。ミレイちゃんのどんなところが好き?

ミレイ

なんか恥ずかしいね。

みっちゃん

う~ん、言葉では説明できません。ミレイちゃんのことは、うらやましいと思うこと自体おこがましい感じなので、「うらやましい」なんて言えないんだけど、(好きな気持ちが)湧き出ちゃってる(笑)。こんなふうに思うことって、あんまりないんですけどね。

――じゃぁ、運命の出会いなんだね。「絶対1期生になる」のこだわりは何だったの?

みっちゃん

やっぱり(ミレイちゃんにとって)特別な存在になりたいじゃないですか。もし自分が講師だったら、最初に出会う1期生には思い入れがあるはずだと思って(笑)。

ミレイ

うん、ある。1期生にはめっちゃ思い入れがあるよ(笑)。

みんなの話を聞いているのが好き

――みっちゃんは、グルコンでも自分から話すというよりは、私たちの話を静かに聞いていることが多かったよね。私たちはそれぞれの悩みやつらかった体験を話すことで、癒されていく感じがあったけれど、みっちゃんにとってあの場はどんな場所だったんですか?

みっちゃん

皆さんの話を聞いているのが好きだし、楽しかった。聞いてることが居心地よかったですね。私は平日働いているから、平日昼間のグルコンに出席するには有休を使うしかないんだけど、それでも参加したいと思った。私にとって落ち着く場所、居たい場所、かな。

ミレイ

うわぁ、うれしい。グッときた。

――私もそれを聞いてうれしい。みっちゃんは以前、「スクールやレッスンで会う人は、友達でもないし、同級生でもない、不思議な関係。『仲間』という感じがする」と話してくれたよね。

みっちゃん

言葉にすると照れくさいけど、「仲間」って感じ。

私、短大のときの寮で、7人くらいですごく仲が良かったんです。でもそれは、寮でたまたま部屋が同じだったからで、教室で会っていたら仲良くなっていなかったかもしれない。だから、友達って感じじゃない。「ファミリー」って呼んでた。スクールの仲間はそれに近い感じなんです。

――そうなんだね。私たちもみっちゃんのファミリーになれてうれしいです。

しゃべらなくてもいい。「ただ、そこにいていい」というあり方

ミレイ

みっちゃんは、積極的に発言したり、自分の課題に向き合ったりするわけじゃないけど、「主体的に、能動的に静かにしている」みたいな「あり方」を私は感じていたよ。「ただ、そこにいていい」という居心地の良さを感じてくれていることに私も気づいていた。それが「心理的安全性」なんだと思うんだけど。

「安全安心を感じてくれている」ってことを、頭での理解じゃなくて、みっちゃんと一緒にいることで私自身も体感できた。スクールやグルコンが安全安心な場になっていることを、みっちゃんのあり方からフィードバックを受けていたよ。

――いま、ミレイちゃんが話してくれたみっちゃんの「あり方」は、私自身はうらやましいと思うところがあります。何も話さずにその場にいて、居心地よくいられるのは、私にはできなかったから。何も話さずにいると居心地が悪かった。だからたくさんしゃべっていました。みっちゃんみたいに、ただ静かにそこにいる、ということは私にはできなかったんですよね。

みっちゃん

私は、皆さんがしゃべってくれるから、静かにいられたんです。誰かがしゃべってくれるから、静かに聞いていられる。

――私は逆でした。誰かが話しているときに、自分が黙っていると、自分の存在がなくなる気がして、「私も何か話さなきゃ」と思っちゃう。

ミレイ

それはきっと、「役に立つことを言わなきゃ」とか、「ためになるようなあり方をしなきゃ」とか思っちゃうんだよね。その感覚は私もよくわかる。

――そうなんです。いま振り返ると、あのころは安全安心を感じれていなかったんだな、って思います。安全安心じゃないから、たくさんしゃべっていた。でも、みっちゃんは逆で、安全安心を感じていたから静かにしていたんですよね。私はそれにも気づいてなかったな。黙っていると存在が消えると思っているから、しゃべらない人を見ても、そういうふうにしか見られなかった。しゃべらなくても、安心してそこに居られるというあり方を想像できなかったから。

ミレイ

最初のころ、はるみちゃんが安全安心を感じていないからしゃべっていたというのは、いま思い出すとよくわかる。でも、場の安全ができてきたら、はるみちゃんの中にも安全安心な感覚が育っていったんじゃない? 人は共同体の一部として環境の影響を受けるし、その人の中に安全安心ができたら、それが環境にも影響を与えていく。人は環境と影響し合いながら生きているんだよね。

心理的安全性とおしゃべりの4象限

ミレイ

いまの話、面白いね。安全安心を感じるからこそしゃべることもあるし、安全安心を感じるからこそしゃべらないこともある。安全安心を感じるから、自分の居心地がいいように「しゃべる/しゃべらない」を選べるんだよね。

逆に、安全安心を感じないからしゃべることもあるし、安全安心を感じないからしゃべらないこともある。この場合は、安全安心を感じていないから、自分を守るためにしゃべったり、自分を守るためにしゃべらなかったり(=凍りつき)する。

――いま思ったんですが、これ、4象限で表現できそうですね!

ミレイ

そうだね! 図にしてみると、こんな感じかな。

ミレイ

言いたいことを言うのも確かに大事だけど、しゃべりたくないときは、しゃべらずにその場に居てもいい。その感覚を持てるのは、心理的安全性のもう一段深いレベルで起きてることなんだよね。

ただ、職場ではその「あり方」は難しいのかもしれないね。言いたいことはちゃんと言える、むしろ能動的に積極的に話す人のほうが目立つし、評価もされるし、結果にもつながる。だけど、そうじゃなくてもいいんだ、というのは、もう一段深いレベルでの心理的安全性なんだね。いやぁ、感動した!

出会って2年、ようやく本当の仲間になれた

――いまだから白状すると、初めの頃、みっちゃんに勝手に距離を感じていたんです。私とは全然違う「あり方」だから、みっちゃんのことをよく理解できなかったんだと思います。最近になってようやく、話をする機会が増えて、みっちゃんのことをすごく近くに感じています。出会ってからおよそ2年経ちますが、お互いを知るにはそれだけの時間が必要でしたね。

みっちゃん

本当にそうですね。半年間のスクールと、その後さらに半年間のフォローアップグルコンだけで終わっていたら、ここまで仲良くはなれなかったと思います。いつからだろう? どこかの段階で、皆さんと一気に仲良くなれた気がします。具体的にいつだったかは覚えてないけど(笑)。

(※1期生は、半年間のスクールの後、半年間のフォローアップグルコンを2回繰り返し、計1年半の時間を共にしました)

――相手のことを知れば知るほど関係も変わっていくというのは、スクールの他のメンバーとの間でも感じています。スクールで仲間と出会えたこと、そしてずっと仲間を続けられてきたこと、本当に幸せだと感じています。みっちゃん、ミレイちゃん、これからもよろしくお願いします。そして、今日はありがとうございました。

(インタビュー・文 前田はるみ)