家族に対してつい口うるさく言ってしまうのが悩みだったみどりちゃん。スクールでの学びを通して、自分の怒りやイライラに気づけるようになったら、感情に飲み込まれて家族に怒ることが減ったと言います。

また、自分の好きなことをやるようになって、「自分が本当に望む人生」についても考えるようになり、仕事や友人関係にも変化が見られるそう。自分の気持ちに気づくために日頃から実践していることも伺いました。

自分のイライラに気づけるようになったら、家族に当たらなくなった

みどりちゃん(精神科医、40代、スクール2期生)

ミレイちゃん自身が心の学びの“生き証人”。信じられると思った

――みどりちゃんは、ミレイちゃんと同級生だそうですね。

みどりちゃん

そうなんです、中高の同級生です。中学はクラスが違ったのですが、高校で同じクラスになりました。でも、一緒にいるグループが違ったので、そんなに親しいわけではなかったんですけどね。

ミレイ

みどりちゃんは歴史が得意だった印象があるよ。卒業してからは全然会ってなかったけれど、2012年だったかな、卒後20年の学年全体の同窓会を企画したときに、フェイスブックでつながったんだよね。

みどりちゃん

そう。当時私は子育ての悩みがあって、アドラー心理学の本を読んだりしていたんです。本に書いてあることは理解できるんだけれど、実践するのは難しいと感じていたときに、ミレイちゃんがアドラーの本を出したことを知りました。読んでみたら、他の本では腹落ちしなかったことがスッと入ってきたんです。

ミレイ

それはうれしいな。

みどりちゃん

本人を前にしてアレですが(笑)、高校時代のミレイちゃんは勉強もできて、おしゃれもして、私から見ると完璧な人で、カッコよすぎて近寄りがたい存在でした。でも、20年ぶりに再会したミレイちゃんは、笑顔の多い親しみやすい人になってた(笑)。

ミレイ

アハハッ!

みどりちゃん

幼少期からの葛藤をメルマガなどで自己開示しているのを読んで、「心の学びを通じて変わったんだ」ということがすごく伝わってきた。ミレイちゃん自身が心の学びの“生き証人”のようだったから、信頼できると思ってスクールに参加しました。

子どもに口うるさくしてしまうのが悩みだった

――当時、悩んでいたことはありましたか? 子育てのことで悩みが?

みどりちゃん

中3の息子がいるんですが、のんびりやさんで勉強しない息子にイライラしていました。「勉強や生活のことは親である私がアシストしてやらなきゃ」という思いが強くて、つい口うるさくしてしまうんです。息子からしたら、先回りしていろいろ言われちゃうから、余計にやる気をなくすんですよね。私、「何々せねば」が結構強いので、できていることよりも、できていないことに目が行ってしまうんです。

――「何々せねば」が強いのは私も同じですね。それで、みどりちゃんはスクールで学んで気づきや変化はありましたか?

みどりちゃん

相手をどうにかしようともがいていたことに気づきました。相手をどうにかしようとするから、口うるさくなる。でもそれって、自分の問題なんですよね。それに気づけたのは大きかったかな。

ミレイ

みどりちゃんがこれまで読んできたアドラーの本にもそういうことは書いてあったと思うけれど、本を読んでも腹落ちせずに、スクールで気づけたというのは、何が違うんだろう?

みどりちゃん

「それは自分の問題です」と本には書いてあるし、自分でも分かっている。でも、どうにもできないから悩んでいるのであって、「どうしろって言うんだよ!」みたいな(笑)。

スクールがよかったのは、グルコンという安全安心な場で自分の悩みを表出できたことかな。仲間の悩みを聞いたり、逆に自分の悩みを聞いてもらったりして、「そういうこともあるよね」と共感し合うことで、問題をかみ砕いて消化できた感覚があります。子育てではみんな紆余曲折あるけれども、「それらが糧になっている」という話も聞けて勇気づけられました。

ミレイ

2期生には不登校経験者や、不登校児のお母さんもいたしね。

グルコンで息子のよいところに気づけた

みどりちゃん

息子のことをみんなに話したときに、息子のよいところを指摘してもらって、私自身がそれに気づけたのもよかったと思います。

ミレイ

人には欠けているところがたくさんあると思うんです。でも、それを補って余りあるほどの魅力がどの人にもある。みどりちゃんの息子さんには、好きなものを好きになる力、熱中力、オタク力がすごくあると感じたよ。これはみどりちゃん譲りだと思うけど。息子さんは文房具、卓球、いろんな生き物のお世話が好きだったよね。ぬいぐるみを洗濯したりとか、感動的なお話をたくさん聞かせてもらいました。 

今の時代、万遍なく偏差値が高くても何の役にも立たないと思うんです。それよりも、突き抜けて変態的に何かを好きな人のほうが強い。だから息子さんは何の問題もないと思うよ。

みどりちゃん

きっとそうなんでしょうね。私、「子どものできていないことをどうにかするのが親の責任」と思っていたけれど、「子どもの力を信じよう」と今は思えるようになりました。だから、できるだけ口を出さないようにしています。

――それを実践してるんですね。息子さんとの関係に変化は?

みどりちゃん

まず、喧嘩しなくなりました。以前は、私が何か言ってもわざと聞こえないふりしたり、素っ気ない態度を取って反抗してみたり、それに対して私が腹を立てるという負のスパイラルがありました。 

私が過干渉をやめてからは、息子が頼ってくれることが増えた気がします。「ここが分からないから教えてほしい」とか、「これについてどうしたらいいと思うか」とか、本人が必要なことを伝えてくれるようになりました。

「どうしてほしいか」を言わないから、伝わらない

みどりちゃん

もう一つ気づいたことがあります。私は学生時代から文章を書くことが好きで、自分のことを「言語化できるタイプ」と思っていたんですが、全然そうじゃなかった。気持ちがワーッと湧き上がってくるんだけれど、それを相手に伝わるように表現するのが苦手で、イライラや怒りをそのまま相手にぶつけてしまっていました。

――自分の気持ちを表現することに慣れてなかった?

みどりちゃん

そうかもしれません。結局、「分かってほしい」という気持ちばかりが強くて、何を困っていて、どうしてほしいかを伝えていないんですね。夫に対してもそうです。 

例えば息子の中学校で面談があると、私が年休を取って行くことが多いのですが、先日も高校の学校説明会に参加したら、平日なのに3分の1くらいはお父さんが来ていたんです。「3分の1くらいお父さんだったよ」と夫に言ったら、「そんな言い方じゃ伝わらない」とさとされました。「『お父さんもたくさん来ていたから、うちもたまにはお父さんに行って欲しいな』とセットで伝えてくれないと分からない。犬にエサをやるみたいに『ほれ、分かれ』と言うのがあなたのいけないところだ」って。

――犬にエサ、ですか(笑)。

みどりちゃん

はい(笑)。自分がどうしたいのか、自分の気持ちを言わないで、そこに材料だけドサッと置いて「私の気持ちを分かってよ」と丸投げする癖があるみたいです。自分でもそれが問題だと気づいてはいるんですが。

怒りに飲み込まれないために日々実践していること

――私もそれ、あります。言葉で伝えずに、不機嫌な態度で「私はこんなに怒ってるのよ!」と当てつけてみたり(笑)。「こうしてほしい」とちゃんと言葉で伝えれば、「そうだったの?」と相手は理解して動いてくれることもあるので、自分のニーズを言葉で伝えることが大事なんですよね。みどりちゃんはそれに気づいて、日常生活ではどうですか?

みどりちゃん

自分のニーズを言葉で伝えられているかと言ったら、まだできている感じはしません。でも、以前のように怒りを爆発させることは減りました。スクールを通して私が手にした3つの方法、①日記を書く(自分の気持ちに気づく)、②マインドルネス瞑想をする、③「その考え(怒りや不安を生み出す元となった考え)は本当ですか?」と自分に問う。 

怒りや不安が湧きあがってきたら、この3つに立ち返ることで、吹きあがったマグマを冷ませるようになったと思います。家族にも「昔ほど怒らなくなったね」と言われます。

――自分の怒りやイライラに気づいて、それに飲み込まれない選択ができるようになったんですね。

みどりちゃん

そうですね。ただ、ニーズを言葉にするのは相変わらず苦手だし、今後の課題です。どうしても、「なんで私ばっかり?」という気持ちが出てしまって。

ミレイ

「なんで私ばっかり」と思うときって、自分をいたわってあげるタイミングなんだよね。「なんであいつはあんなにできないんだ?」と思うときも同じで、「自分はできていてすごいなぁ、私は本当にすごい!」と自分に言ってあげるタイミング。実際にみどりちゃんはすごいから!お仕事では責任ある立場を任されているし、家族のことも自分のことも頑張っていて「すごいんだよ!」って伝えたくなりました。

置き去りにしていた「好きなこと」を取り戻す

ミレイ

みどりちゃんは好きなものを好きになる力をすごく持っているよね。熱中力というか、熱狂力がすごい!歴史の話、鬼滅(の刃)の話、ヤクルトの話をしているときのみどりちゃんはキラキラしている(笑)。

――野球が好きなんですね。

みどりちゃん

はい。30年くらいヤクルトスワローズのファンです。2軍の試合もたまに見に行きます。好きなものにガーッとのめり込むのは昔からですね。

ミレイ

それに今、歴史を勉強するために大学に入ったんだよね。

――へぇ、お忙しいのに。いつからですか?

みどりちゃん

2020年の秋から。スクール2期が始まった頃。

――なぜまた大学に?

みどりちゃん

学生の頃、歴史の研究者を夢見るくらい歴史が好きだったんです。「歴史は趣味でもできる」とアドバイスされて医学部に進んだのですが、仕事や子育てをしながら、ずっと歴史の勉強を自分の心の隅に置き去りにしてきた感覚がありました。「本当はやりたかったのになぁ」という思いがフツフツとあって。

ミレイ

みどりちゃんが歴史好きなことは知っていたけれど、それほどまでに好きで、なのにそれを「置き去りにしてきた」なんて。それを思うだけで涙が出そう……。

みどりちゃん

(笑)。きっかけは、勉強しない息子のことで悩んでいたとき、お友達に言われた言葉です。「みどりちゃんが勉強したほうが早いんじゃない?」って。確かにそうだなと思ったのが一つですね。それから父が突然病気で亡くなって、「人間いつ死ぬか分からないから、やりたいことをやってから死にたいな」と思ったこと。3つ目が、ミレイちゃんからのアドバイスです。「やりたいことを、今を生きるためにもやったほうがいいよ」って。

――やりたかったことを始めてみていかがですか?

みどりちゃん

歴史の勉強中は集中するので、心が穏やかでいられます。日記やマインドフルネス瞑想も自分を癒してくれる手段ですが、歴史の勉強もそれと同じ効果があることに気づきました。やってよかったと思っています。

ミレイ

自分の好きなことをするほうが、息子さんにばかり目が行かなくなるだろうし、いい意味で距離が置けるとも思ったんだよね。好きなことをそれだけ「好き」と思えるのってすごいことだよ。それはみどりちゃんの力だと思うから、「好き」を貫いたみどりちゃんの選択が自分のことのようにうれしかったよ。

「自分の本当の望み」にも気づけるようになった

ミレイ

スクール終了後の個人セッションで、友人との付き合い方にも変化があったと話してくれたよね。あれが印象的でした。

みどりちゃん

そうなんです。この前も、お友達のお子さんの受験が終わったので、何人かのメンバーで会おうよと誘われました。でも、みんなそうそうたる学校にお子さんを合格させている人たちだから、行っても私があまりいい思いはしないだろうと思ったのと、コロナ禍での食事会だったというのもあり、お断りすることにしたんです。 

人と比べて「うちの子にもっと勉強させよう」と思うことが果たしていいことなのか。私も嫌な思いをするし、子どもも嫌な思いをするだけだし。お断りして結果的によかったと思います。

――以前は断れなかったんですか?

みどりちゃん

断れなかったですね。「みんなは受験どうしてるんだろう?聞いておいたほうがいいかな」といった打算があって、情報やノウハウを集めるために参加していたところはあります。それが本当に自分のしたいことなのかというと、そうではなかったなと。スクールを通じてそんなことも考えるようになりました。

――自分の本当の望みに気づけるようになったんですね。

みどりちゃん

私はこれまで上昇志向の強い人たちの中で生きてきて、周りに負けないように「上に上に」と頑張ってきました。でも、そういう人生を自分はそれほど望んでいなかったのかもしれません。「上に行かなきゃ」と思い込んでいただけなのかも。 

自分が望んで上を目指すのと、周りから望まれて期待されて、「やらなきゃいけないからやる」のは違うんですよね。働き方に関しても、人の評価ばかり気にするのではなく、自分がどうしたいかを考えられるようになりました。そんなに頑張らなくていいのかな、と今は思っています。

ミレイ

まさしく「自分軸」が持てるようになったってことだよね。自分の人生なんだから、自分がやりたいことをやって、好きなように生きていっていいのは当たり前なのに、社会にいるとなかなかそう感じられない気がします。スクールの経験を通してみどりちゃんが自分を大切にするようになったことが伝わってきました。久しぶりにみどりちゃんの話が聞けてうれしかったよ。

――共感できるお話がたくさんありました。みどりちゃん、ミレイちゃん、ありがとうございました。

(インタビュー・文 前田はるみ)