常に心が安定した自分になりたくて、LMTスクールに参加したともピー。

でも現実は、家族の問題をはじめ、ままならない日常に心が揺り動かされる日々。

そんなともピーに変化が起き始めたのは、これまで抑え込んでいた感情を解放し、「揺れ動く自分のままでいい」と思えるようになってから。

自分と家族にどのように向き合ってきたのか、話をうかがいました。

自分の感情を受け容れたら、自分にも家族にもやさしくなれた

ともピー(50代、産業保健師、スクール3期生、4期再受講)

――LMTスクールに参加した経緯を教えてください。

ともピー

産業保健師として25年ほど働いていますが、産業保健のオンライン研修に講師として登壇したミレイちゃんに惹かれたのがきっかけです。
 
当時、継続して学んでいたカウンセリング自主勉強会がコロナ禍で中止となり、新しく学びを継続できる場を探していた時でもありました。私が学びの場に求めることが3つあって、1つは保健師の仕事に役立つ知識を得られること、2つ目は自分の心が安心、安定できる場であること、3つ目が講師のスタンスです。研修に登壇したミレイちゃんのスタンスが学んできたカウンセリングの先生と同じ、好きなスタンスだったことからLMTに参加しました。

――ミレイちゃんのどんなスタンスが好きだったのですか?

ともピー

スキルよりもマインドを重視するスタンスです。もちろん、知識やスキルも大事だと思っていますが、その前に「どうあるか」を大事にしたいと思っています。

――すでにいろいろと学んでいたんですね。

ともピー

はい。ただ20年近くカウンセリングを学んできましたが、日常での自分のあり方に生かせていたかというと、そこまでではなくて。私には引きこもりの息子がいるのですが、そのことに罪悪感を抱いたり、仕事でもミスをすると必要以上に自分を責めたり、心の安定からは程遠い状態でした。仕事の些細なミスでも、「完璧にしなきゃ」という意識が強くて、落ち込んで、自分にダメ出ししてしまう。自分を受け容れられないから、人に対しても内心イライラしていましたね。

――それで、LMT3期に参加してどうでしたか?

ともピー

ミレイちゃんの講義を聴いたり、グルコンで仲間のセッションを見たりして、もっと自分自身のことを受け容れたい、どんくさいそのままの自分に本当のOKを出したい、と思うようになりました。ただ、3期の半年間はあっという間に終了。自分に向き合うスタートラインにようやく立てたばかりだったので、継続してフォローアップコースに参加し、4期も受講しました。現在は4期のフォローアップコースに参加しています。

「自分に厳しく」がデフォルト

ともピー

LMTで一番衝撃だったのは、4期の個人セッションで「ともピー、自分に厳しいね」とミレイちゃんに言われた一言でした。

――どういうことですか?

ともピー

それなりに自分にOKを出しているつもりだったけれど、人から見れば、全然そうではなかったみたいです。私は自分のダメな部分にばかり焦点を当てるから、自分に全然満足していない。「そういう姿勢が『自分に厳しい』ってことだよ」と指摘されて、びっくりでした。私は、自分はどんくさいから人よりも多少努力が必要で当たり前だと思っていて、自分に厳しいという自覚はまったくなかったんです。

ミレイ

それにびっくりしたことに、びっくりだけどね。

ともピー

自分も相手も受容する「I am OK, you are OK.」が大事だと知識では理解していたし、実践しているつもりだったけれど、実際には「まだまだ頑張りが足りない」と自分のことを否定していたんですね。そう言えば、以前のカウンセリングの先生にも同じことを言われていました。「もっと自分にやさしく」「自分の感じたことを否定しなくていい」と。でも、あの時はよくわかってなかったんです。LMTでようやく腹落ちしました。

――もっともっと自分にやさしくしていいんだ、って。

ともピー

そうです。他にも言われていたのは、例えば問題が生じたときに、自分の感情を深く味わうことなく、すぐに対処法を探ろうとすること。「これが問題だ、じゃあこうしよう」とすぐ対処したくなるんです。すると先生に、「対処はいいから、まずは今の感情を味わって。そこに留まって」といつも言われていました。

ミレイ

すぐにスキルに走っちゃうんだね。私も昔はそうだったから、共感します。「嫌だったんだ」「悲しかったんだ」「怒ってるんだ」という感情を十分に味わってあげると、自分の気持ち、感情についての理解が深まり、自然とその感情が完了していきます。対処をするにしても、感情をしっかり味わってからだと、無理に力技でなんとかしようとするのではなく、健全に理性を使って問題に対処できるようになります。

ともピー

なるほど。今、聞きながら、感情を大事にしたいのに、ついスキルに走ってしまうもどかしい自分を感じています。

学んだことを仲間と実践できる場

ミレイ

LMTには、ともピーのように他で学んでから参加される方が多いです。ともピーが話してくれたように、以前はわからなかったことが、LMTで腑に落ちたのは、何が違ったのでしょうか。それまでの学びの土台があり時が熟したことも理由だと思いますが、他にありそうですか?

ともピー

ミレイちゃんは以前、人の変化には「知識、実践、仲間」の3つが大事だと話してくれましたね。知識を学べる場は他にもありますが、実践と仲間を大事にしているのは他にない特徴だと思います。LMTは基本、半年間続く集中コースで、毎月複数回集まる機会があること、そして実践を何度も繰り返していく場であることが良かったように思います。
 
あと仲間という点では、他の人のセッションを見ながら気づくことも多いし、仲間がいるこの場を「自分の居場所」と思えることが何よりうれしいです。普段、嫌なことがあって心が揺れても、共に学ぶ仲間の顔が浮かぶと「私も頑張ろう」とエネルギーが湧いてきます。

ミレイ

それを聞くと、泣けるなぁ(涙)。ありがとうございます。

ともピー

たまにリアルで集まる時も、お行儀よくしなきゃいけない雰囲気がありません。それぞれが自分の心地よさを大事にして、自由にしている感じが好きです。

――同感です。スクールではみんな思い思いの体勢でくつろいでますね。

ともピー

そうなんです。それに、「自分の感じたことを表現していいんだ」と、仲間とのやり取りを通して学びました。私は普段、人と違う意見を述べることが苦手で、つい周りに合わせてしまいます。でも、LMTの仲間には、違う意見を述べても、否定も攻撃もされない安心感があります。まだ完全に自分の鎧を脱げたわけではないけれど、「言ってもいい」という感覚を自分の中で育んでいるところです。

――その感覚、わかる気がします。LMTは自分を表現する練習の場でもあるんですよね。では、ともピーにとっての実践は何ですか?

ともピー

感情をちゃんと味わうことです。苛立ったり、悲しかったり、感情が揺れた時は、深呼吸してそこに留まる。問題にすぐ対処しようとしない(笑)。そして、感情を適切に表現してガス抜きする。
 
例えば、職場で腹の立つことがあったら、以前は感情を抑え込んでいたけれど、今は職場のトイレで発散しています。「バカヤロー!」と声に出さずに、口パクで“エア怒鳴り声”をしたり、地団太踏んだり、誰かに聞いてもらったり、「腹立つ!」と言葉に出したり表出することをあえて実践しています。

――エア怒鳴り声、いいですね! やってみてどうですか?

ともピー

自分の感情を抑えつけないでいると、エネルギーが減らない感じがします。

ミレイ

そうなんですよね。自分の感情を抑えようとすると、余計なエネルギーを使うので、生きる力が湧いてこなくなります。感情を抑えることによる自分へのダメージは大きいですね。

家族のことに向き合うのが苦しかった

ミレイ

さっき、「自分に厳しいね」の一言が衝撃だったと話してくれたけど、私は別のことが印象に残っています。最初の頃、セッションでは仕事の話ばかりしてたでしょう。ともピーの中で、他に見ないようにしていることがある気がしていました。

ともピー

あぁ、家族のことですね。確かにあの頃は仕事の話ばかりでした。仕事は自分のペースで進められて、やればある程度の成果が出ます。でも、家に帰れば思いどおりにならない子どもがいて……。そのギャップが苦しくて、仕事に居場所を求めていました。仕事は本当に楽しかったけれど、それは家族のことを見ないようにしていたのかもしれないですね。当時は家族のことを話そうとするだけで涙が出そうになって、話したくてもあまり話せませんでした。

――それくらい苦しかったのかなと思うと、切ないです。あれから時間が経って、ご家族への向き合い方に変化はあったのでしょうか。

ともピー

はい、ありました。以前は、引きこもりの息子が他人からどう見られるだろうとか、息子の将来はどうなるんだろうと不安でした。息子は買い物や1人で旅行に行ったりはするし、家庭内では会話もあるのですが、家族以外との接点が少ないので本人に変わってほしい気持ちがあったし、親がいなくなった後のことを考えて「外に出て働いたら?」と言ったこともありました。
 
でもある時、ミレイちゃん主催のワークショップで、講師の津田真人さんに「安全こそ生きる力」という言葉をいただいて、「息子にとっての安全が自宅なら、その安全な場所を奪うことはやめよう。そのままの息子に対して私ができる援助をしよう」と今は考えています。

ミレイ

つまり、外に出して社会に適合させるよりも、今の状態のまま社会に居られるように、と考えが切り替わったの?

ともピー

はい。相手を変えようとは思わなくなりました。代わりに、自分のことに集中できるようになりました。私自身が楽しくいること、自宅で安全安心を感じられる私でいることが、家族にとっても一番いいことだと思うんです。とにかく自分が楽しく、安心していられるように今は心がけています。

自分を大事にできると、家族のことも大事にできる

――自分が楽しくいることを意識し始めて、何か変化はありますか?

ともピー

そうですねぇ、夫を今まで以上に大事にするようになりました。

――ほう。どういうことですか?

ともピー

息子のことでは夫も気をもんでいるものの、基本、見守り姿勢です。それでも、こだわりが強い息子との日常生活の中で息子を注意することもあります。そんな時、以前は夫に「そんなに怒らずに、こう対応したら?」と正論を押しつけていました。でも今は、夫の苛立ちや悲しさをそのまま受け止めながら、「そんなのしゃーないやん」と笑いに変えるようにしています。そのほうが、私も夫も気持ちが楽になれるし。お互いに助け合ってやっていこう、と思うようになりました。

ミレイ

今の話も、泣けます(涙)。旦那さんの感情を受け止められているのは、ともピー自身が自分の感情をしっかり受け止めて、味わえるようになったからだね。「じゃあ、こうしよう」とすぐにスキルに走る以前のあり方から、変わったからだよ。

ともピー

あ、そうか!

ミレイ

やっぱりまずは自分なんだね。自分が楽しく、安心していられるように自分をケアできているから、旦那さんのことも大事にできているんだと思うよ。

感情が揺れ動いても、「そのままでいい」

――ここまでお話をうかがって、自分にOKを出せなかった頃のともピーからはすごく変わった印象を受けました。以前の自分をふり返って、何と声をかけたいですか?

ともピー

なんだろう……。「そのままでいいよ」かな。いろんな悩みがあっても、そのままでいい。悩みながら頑張ってきたから、いろんな人とご縁が生まれて、今につながっている。だからもう、そのままでいいんじゃないかな。

――そうですよね。そう思えるようになったのも、LMTでの学びが大きかったのかなと思います。ともピーは以前から「そのままでいい」と思えていましたか?

ともピー

そう言われれば、そんなふうには思ってなかったですね。努力がデフォルトですから。

ミレイ

3期に参加した理由について「学びの場に触れていたかった」と言っていたけど、もしかすると「変わりたい」とか、「もっとこうなりたい」という気持ちもあったのかな?

ともピー

ありました。カウンセリングや心理を学べば、広い視点を持てて嫌なことやつらい気持ちが少なくなって、いつでも心が安定していられるイメージがありました。だから、心の安定を求めて3期に参加しました。でも、ミレイちゃんが言っていたように、そうじゃないんだと腑に落ちました。嫌なことがあれば、感情は揺れる。腹も立つし、悲しくもなる。良い意味であきらめがつきました。そういうものなんだ、と今は思えるようになりました。

ミレイ

(津田)真人さんは、「揺れ動けど、ブレない」と言いますね。揺れるとブレるは違うんだと。芯がしっかりしているからこそ、揺れてもいい。人間の体はいつも同じではないし、常に細胞も働いてる。だから感情が揺れるのは当たり前なんです。いろんなことをひっくるめて「そうなんだな」と受け容れる――そんな感覚をともピーが今、持っている気がします。

ともピー

腰の痛みに対してすぐ湿布を貼るんじゃなくて、腰の声を聞くとか、腰の痛みに感謝する、とかね(笑)。それを今のほうが前よりずっとできているかも。

ミレイ

これまでのともピーとの関わりや、セッションのことを思い出しながら、「思えば遠くへ来たものだ」としみじみ感じています。このインタビューは私にとってもふり返りのいい時間になりました。共感することも多かったです。ご家族のことに対する感じ方が変ったという話を聞いて、ホッとしました。

――私もです。旦那さんを大事にしている話は心にしみました。ともピー、ミレイちゃん、ありがとうございました。

(インタビュー・文 前田はるみ)